劇団四季

SANKEI EXPRESS カトルセゾン 劇団四季 「『アルデールまたは聖女』 味方 隆司」

《「姿なき主役」の大きな存在感》
1954年1月22日、仏劇作家ジャン・アヌイの「アルデールまたは聖女」(浅利慶太演出)で旗揚げした劇団四季。
その原点の作品が、55年前と同じ22日から上演される。“主役”のアルデールが最後まで姿を見せない、精妙かつ異例の舞台。
「喜劇ですが、生きることの奥深さや真実を寓話的に感じさせる大人の芝居」とアルデールの義弟である伯爵を演じる味方隆司は話す。

■台本にない「会話」
 舞台中央に、象徴的に置かれている扉。天の岩屋戸のように固く閉ざされた扉の向こうには、身体障害を持ち40歳にして初めて恋に落ちたアルデールが籠城している。障害者同士の「あり得ない恋」だとして、離れて暮らす家族も集まり、扉ごしの説得が始まる。
 「アルデールのせりふはアヌイも書いてないし、演出家も指定してない。出演者はそれぞれの台本を作って、彼女と会話しているんです」
 扉に耳をあて、客席に聞こえぬアルデールの言葉に応える出演者ら。1人芝居が求められる説得工作の中、それまで“秘め事”とされてきた家族それぞれのスキャンダルが、次第にクローズアップされていく。「聖女のように暮らすアルデールを説得するのは、伯爵含め不倫のストレスを抱える者ばかり。愛を説こうとすればするほど滑稽になる。でも人生を歩むっていうのは、まさにこんな喜劇なのかもしれません」

■純粋さへのあこがれ
 あの手この手で扉をこじ開けようとする騒動の中、伯爵はアルデールの純愛を理解し、対照的な扉の外の不純も自覚する。「やっといま本当の愛にぶつかった」など、アヌイらしい純粋さへのあこがれが伯爵の言葉に表れ、姿の見えないアルデールの存在感が大きくなっていく。
 「人って日常の中ですごく下品なことを考えたり、高尚なことを考える。伯爵は普通の男でエゴもあるが、作者が意図を持って愛を語らせるので、いいせりふが一杯あります。お客さまそれぞれの人生経験で、持ち帰るものは違うでしょうね」

■作品に誠実に
 「何としても都会に出たくて、『芝居をやる』と親をだました」とこの道に入るきっかけを申し訳なさそうに話す味方。もっとも演劇の専門学校生時代、四季のせりふ劇に魅力を感じ、有言実行となった。「当時『ちいさき神の作りし子ら』や『エレファント・マン』などの翻訳劇を次々に上演していて、いいなぁと思いましたね」
 最近はそのせりふ劇での活躍が目立ち、尊敬する大先輩、日下武史の役を引き継ぐ機会も増えた。今回の伯爵役もその一つ。「プレッシャーも大きいんですが、作品に忠実に、役を生きたいですね」。劇団創立メンバーの思いも引き継ぎ、伝説の作品に臨む。

■あじかた・りゅうじ
静岡県出身。1982年に劇団四季研究所に入り、翌83年「アンデルセン物語」で初舞台。「ジョン万次郎の夢」のジョン万次郎、「コーラスライン」のポール、「アンデルセン」のハンス役など数々のミュージカル役で主演する一方、近年は「この命誰のもの」の早田健役ほかせりふ劇でも活躍している。

【飯塚友子さん】

(2009年1月17日付)