新作ミュージカル『ノートルダムの鐘』東京公演の開幕まで1ヵ月半に迫った10月下旬、アメリカからクリエイティブ・スタッフが来日。本格的な稽古が始まりました。
今回いち早く来日し、俳優・スタッフの指導にあたるのは、演出補 マシュー・シャイナー氏、音楽監督 ブレント=アラン・ハフマン氏、振付担当 チェイス・ブロック氏。
緊張と期待の眼差しで待ち迎えた俳優たちに、スタッフらがまず初めに掛けたのは、労いの言葉でした。
「皆さん今日まで、大変な努力をしてくださったと聞きました。心から感謝します。今日は稽古初日。お客様にこの物語を語るための、第一歩です。この作品が私の人生を大きく変えたように、皆さんにもきっと新たな変化をもたらしてくれることでしょう」(演出補・シャイナー氏)
オーディションの選考結果が発表されてからというもの、俳優たちは個人レッスンに、歌稽古、本読み稽古と基礎を積み上げてきました。荘厳で美しい音楽と、心揺さぶる深いドラマ――。シャイナー氏の言葉の通り、この間にも、"自分の人生を変える作品になる"という予感は、誰しもが感じていたよう。俳優一同、深く頷いて応えます。
さらに振付担当・ブロック氏は、「物語を語るにあたり、言葉だけでなく身体を使ってこの時代を表現していただきたい」と続けると、練習してきた片言の日本語で、「ワタシタチノ プロダクション、『ノートルダム ノ カネ』ヲ、ミナサント、キョーユーデキルコト、ウレシク オモイマス!」と愛嬌たっぷりに挨拶。
また、作曲家アラン・メンケン氏の作品に10本以上携わってきたと話す音楽監督・ハフマン氏は、「彼の数ある作品の中で、最も好きなのがこの作品です」と前置きし、「皆さんの琴線にも触れる作品であることを祈っています」と伝えました。
合流初日は、改めて読み合わせ稽古を実施。
プロローグを飾るナンバー「The Bells of Notre Dame(『ノートルダムの鐘』)」で、厚く壮大なコーラスが稽古場に響き渡ると、クリエイティブ・スタッフ陣は満面の笑みで目を合わせ、大きく頷きます。
終了後には「ここまでの十分な準備によって、素晴らしいスタート地点に立つことができた」と、拍手を送りました。
その翌日、稽古はさっそく仮セットのなかでステージング稽古(立ち位置を決め、動きをつける稽古)に移りました。
かつてない、壮大なドラマでお届けする新作ミュージカル『ノートルダムの鐘』。
携わった俳優・スタッフすべての人生を変えたというこの作品は、きっとお客さまの心にも大きな変化をもたらすことでしょう。
どうぞご期待ください!
撮影:阿部章仁、劇団四季
11月24日(木)、劇団四季の拠点・四季芸術センターにて、新作ミュージカル『ノートルダムの鐘』の公開稽古と合同インタビューが行われました。
本作の演出を手掛けているスコット・シュワルツ氏が合流し、いよいよ稽古も大詰め。
集まった多くのメディア関係者を前に、「陽ざしの中へ(Out There)」「トプシー・ターヴィー~息抜き(Rest and Recreation)~タンバリンのリズム(Rhythm of the Tambourine)」「地獄の炎(Hellfire)」の3つのシーンが披露されました。
「陽ざしの中へ」では、鐘突き塔から逃れられない絶望が、外の世界へ飛び出す希望へと変化する瞬間を、伸びやかな歌声とともに表現。
カジモドの運命が、象徴的に描かれる場面です。
「トプシー・ターヴィー~息抜き~タンバリンのリズム」では、ジプシーたちが生命力の中にも狂気を孕んだエネルギッシュなダンスを展開。
そして、エスメラルダが妖艶な魅力でカジモド、フロロー、フィーバスを次々に虜にしていきます。
そして「地獄の炎」では、聖職者の責務と悪魔的な欲望の間で葛藤するフロローの鬼気迫る歌唱を、クワイヤ(聖歌隊)の荘厳なコーラスとともに披露しました。
3つのシーンを通した後、シュワルツ氏は俳優たちを呼び寄せると、個別にシーンの背景やキャラクターの心情を細かく熱心に伝えます。その情熱に応え、2度目の稽古では目に見えてブラッシュアップされた演技を見せた俳優たち。
その後、合同インタビューではシュワルツ氏とカジモド役候補の海宝直人、飯田達郎、田中彰孝の3人が、開幕への意気込みを語りました。
「排他的な風潮が蔓延する現代において、本作のテーマはますます時代にフィットしてきています。完成された演劇でありながら、原作小説を読み解いていくような臨場感をあわせ持つこの舞台は、観客の皆様の解釈という共同作業があって初めて成立する物語。ぜひ劇場で、舞台を間近に感じていただきたいと思います」
「とても濃密でドラマが凝縮した作品です。カジモド役は、もし演じきれたら俳優人生を全うしてしまうんじゃないかとすら思える深く重厚な役柄。これからもっと彼の中に入り込んでいきたい」
「両親に初めて買ってもらったビデオがアニメーション版『ノートルダムの鐘』でした。偶然とはいえない運命を感じており、人間としても俳優としても新しい一歩を踏み出せる予感がしています」
「これまで演じてきたどの役よりも、内に秘めた表現、つまり居方での表現を求められる役だと思います。オーディションに合格した日から、僕の体にカジモドの血が流れ出した。彼の背負った極限の宿命を自然に演じることができるよう、日々挑戦していきます」
撮影:上原タカシ
日本初演の開幕が刻々と迫る、新作ミュージカル『ノートルダムの鐘』。
劇団四季の拠点・四季芸術センターの稽古場で海外クリエイティブスタッフによる稽古が佳境を迎えようとしていた頃、劇場には物語の舞台、ノートルダム大聖堂が現れ始めました!
1482年のパリ・ノートルダム大聖堂を舞台に、鐘突き塔で孤独に暮らす主人公カジモドを含め、4人の男女の愛が絡み合う物語――。
ゴシック建築の最高峰として名高いノートルダム大聖堂は、このミュージカルの舞台においても美しく荘厳な佇まいで再現され、特に劇中、カジモドがパリの街中に響かせる"鐘"は強烈な印象を残します。
カジモドが全身の力を使って奏でるこの鐘は、全部で7つ。
大きいもので高さ1.3メートル、横幅は1.5メートル以上もの大きさになり、その一つひとつには特殊なセンサーが取り付けられ、異なる音階を響かせます。
さらに、木組みのセットもまた印象的。
可動式の2つの階段がフォーメーションを変えながら、ある時は大聖堂の階段、またある時はジプシーの隠れ家「奇跡御殿」へ通じる階段へと変貌するのです。
『ノートルダムの鐘』の舞台美術は、これら舞台装置をはじめ、小道具や衣裳、ヘアメイクなど一貫して、シンプルでありながら研ぎ澄まされた美しさを湛えています。
さらに魅力的なのは、これら舞台美術を用いた独特な演劇表現。
随所に取り入れられたシアトリカルな演出に、物語そのものをより印象的に、よりドラマチックに描き上げるのです。
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