『恋におちたシェイクスピア』メディアの反響

演劇の本質へのオマージュ 日経新聞(夕刊)
2018年6月29日付
内田 洋一氏

「演劇の本質へのオマージュ」
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引き出された劇団の潜在力 読売新聞(朝刊)
2018年7月10日付
祐成 秀樹氏

演出は青木豪。ミュージカルの印象が強い劇団四季が、12年ぶりの新作セリフ劇を、51年ぶりに外部の日本人演出家を招いて作った。

16世紀後半の英国。若きシェークスピア(ウィル)の新作オーディションにトマスと名乗る青年が現れる。ウィルは才能にほれ込むが、正体は資産家の娘ヴァイオラ。当時、女性の舞台出演は禁じられていたのに、芝居好きが高じて紛れ込んだのだ。だが、その後、ウィルは女性の姿でいるヴァイオラに一目で恋におちてしまう。

巨匠トム・ストッパードらの脚本による同名映画を基に英国で上演された舞台の脚本を用いた公演だ。その脚本(翻訳・松岡和子)が断然面白い。

ウィルが、自身の恋の推移を脚本に書き込むうちに「ロミオとジュリエット」が完成する経緯を描くのだが、随所にまぶされたシェークスピア風味が楽しい。名セリフの引用に加え、なりすましと勘違いという劇聖得意の展開で進むのだ。その上、演劇を愛した人々の心意気を描く挿話がたくさん盛り込まれているのもいい。

青木の演出は、奇をてらわず脚本と劇団の魅力を生かすことに力点を置いたようだ。主な舞台装置は、往時の劇場を思わせる木組みの構造物。演技を引き立て、バルコニーや宮殿など様々な風景を想像させた。

美声と感情みなぎる演技で舞台を引っ張ったウィル役・上川一哉=写真=、人気役者を楽しげに演じた阿久津陽一郎、謎めいた少年役を怪演した平田了祐——。こんなに面白い個性がいたのかと驚き、何度も笑った。また、四季独特の明瞭な話し方は、セリフに込められた美しい言葉一つ一つを際立たせた。

劇団の潜在力が十分に引き出され、言葉と愛が心を打ついい舞台に仕上がっていた。今回の挑戦は成功と言えるだろう。ヴァイオラ役・山本紗衣も健闘。

——8月26日まで。その後、京都、東京、福岡を巡演。

写真・阿部章仁

2018年(平成30年)7月10日(火曜日)読売新聞 文化面

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