
横浜『キャッツ』ができるまで 〜衣裳編〜
こちらは横浜・四季芸術センターの衣裳部屋。
『キャッツ』横浜公演開幕に向けて衣裳の準備を行っています。
『キャッツ』はもともと動きの激しい舞台ですが、
1998年の演出変更の際、より野性的な猫へと進化したため、
衣裳の消耗もとても激しくなりました。
そこで、タイツは一人(一匹?)6〜8枚ずつ準備します。
サイズがいくつか必要な場合は、ひとつのキャラクターのために
20枚ものタイツが必要になることもあります。
それが24匹分ありますので、ひたすら作業あるのみです。
作業は「模様描き」「ボカシ」「ケムンパ付け」「蒸し」の4工程。
ペンで一本一本模様を描き
霧吹きでアルコールを吹きかけながら
ブラシでぼかしていきます。
こちらはタイツに飾りの毛(ケムンパ)を縫いつける作業。
飾りの毛はなぜか昔から「ケムンパ」と呼ばれているのですが、
毛虫に似ていることから、赤塚不二夫さんのマンガに
出てくる「ケムンパス」から付けたのでは?という説があります。
毛足の長い毛糸を手編みして作るのですが、ロングラン中に
毛糸が生産終了になってしまうことも少なくありません。
似たものがあるかどうかは常にチェックしています。
最後に蒸して熱を加え、色を定着させます。
この工程は着物を染める時と同じなので、初演の頃からずっと
着物の専門業者さんにお願いしています。
タイツの作業と並行して、上着類も制作中です。
これは、グロールタイガーのシーンで子分役となる
雄猫たちが着る衣裳。(マンゴジェリー用)
こちらはマンカストラップ用のデザイン画。
ほんの一瞬しか見えない、もしかしたら誰も気がつかない
ようなところまでこだわることも楽しみのひとつです。
26年前の日本初演時は、写真・映像の撮影ができず、
今のようにメールで簡単に情報をやりとりできる時代でも
なかったので、とにかく舞台を繰り返し観て、
記憶を頼りに衣裳をデザイン・制作したそうです。
その仕事がこちら。グリザベラの衣裳です。
グリザベラのコートは現在3着ありますが、
これは初演からずっと大切に使い続けてきたもの。
少し色が落ちているので、横浜公演に向けて
これから染める予定です。
『キャッツ』は、色へのアプローチというか、
色彩に対する“勘”が必要とされる作品だと思います。
初演時の衣裳やデザイン画に込められた想いや感性を読みとり、
イメージをふくらませて良いものを創れるかどうか。
そこが難しくもあり面白いところでもあります。
最近は舞台装置はコンピューター制御され、
衣裳も専門の業者に依頼をすることも多くなってきましたが、
『キャッツ』は舞台装置のほとんどをスタッフが動かし、
衣裳も全て劇団四季でひとつひとつ手作りしています。
最新技術を駆使した舞台も華やかで素敵ですが、
『キャッツ』のような昔ながらのスタイルも
大切にしていきたいと思っています。
『キャッツ』は本当に良く考えられた素晴らしい作品ですし、
まさに「総合芸術」の名にふさわしい舞台だと思います。
横浜でもたくさんのお客様に楽しんでいただけますように。
(『キャッツ』衣裳担当・G)
『キャッツ』横浜公演、開幕まであと30日!
