
ロマンとソウルの街―横浜 第2回 「バー・スターダスト」
京浜急行「仲木戸」駅から徒歩20分ほど。瑞穂埠頭(ノースピア)へ渡る瑞穂橋まで直進すると、ノスタルジーを感じさせる風景が眼前に現われる。マリンタワーやみなとみらいの高層ビル群を遠景にして、「United State Army Yokohama North Doc」と表示のある橋の袂に、アメリカンスタイルのバーのネオンサインが輝いている。「Bar Star Dust」。失われつつある古き良き横浜が、そこにはある。
瑞穂橋の袂にある「Bar Star Dust」。すぐ隣には、米軍補給基地がある。
創業1954年のこのアメリカンバーは、横浜では関内のクライスラーに次ぐ老舗バー。かつては、店いっぱいに基地(キャンプ)から米軍兵が集っていたという。ベトナム戦争が終わった後あたりからは、瑞穂橋の向こう側に広がる米軍補給基地からの来客は次第に少なり、代わりに全国から訪れるる観光客が、“ぜひ横浜の思い出に”と訪れることが多くなった。
映画や「西部警察」や「あぶない刑事」をはじめとしたドラマ、ファッション雑誌や人気ロックバントのカレンダー撮影が行われてきたこのバーには、サザン・オールスターズのメンバーたちも学生時代に通っており、「想い出のスターダスト」とは、まさにこの店を歌ったもの。日本を代表するファッションデザイナー金子功も、こよなくこの店を愛した一人。今では、海外からの撮影依頼が舞い込むこともしばしば。
横浜の歴史が刻み込まれている店内。窓の向こうには、みなとみらいの高層ビルが見える。
歴史のしみ込んだウッドフロアやカウンターテーブル、店内に飾られた浮き輪や網、ポール・アンカやコニー・フランシスといったオールディーズが流れるジュークボックス。そこに一歩入ると、当時の空気が鼻先をかすめる。
港町らしく、窓から猫が撮影の様子を覗いていた。
「昔は、米軍兵で店内はいつも満席。とてもこうしてカウンターで落ち着いて飲むということはできませんでした。私は、マスターのお父さんの代から、とても可愛がってもらっていて、マスターには頭が上がりませんね」(若い頃から通っているという50代男性)
カウンターに座ると、米軍兵好みの女性がデザインされた装飾が。アメリカのダウンタウンのバーに迷い込んだ気持ちになる。「スカイダイビング」(右)
カクテルの種類は、スタンダードなものを中心に約100種類。父親の跡を継いで、この店を守っているマスターのお勧めは、ラムをベースにしたスカイブルーのカクテル「スカイダイビング」。少し甘味のあるさわやかな味わい。
昔から米軍兵に人気の高いという「神風」は、ウォッカベース。この店では、コアントローの代わりに日本酒をミックスし、切れ味の鋭いカクテルとなっている。オイルサーディンやガーリックラスクなどと一緒に、ゆっくりとした時間を過ごしたい。
バー・スターダスト(Bar Star Dust) □TEL 045−441−1017 □住所 横浜市神奈川区千若町2−1 □営業時間 17:00〜2:00 年中無休 |
