2月2日(日)、自由劇場で上演中の『思い出を売る男』が千秋楽を迎えました。
劇団の恩師である劇作家・加藤道夫の遺した郷愁と幻影の舞台。詩と音楽と美術が調和し、若くして命を絶った詩人の魂が、60年の時を経て、その教え子たちによって再び瑞々しい生命を取り戻してきました。
初日から乞食役を大切に演じてきたのは、劇団創立メンバーであり、加藤の愛弟子でもある日下武史。千秋楽の開演前、「交流を大切に」とカンパニーに言葉を贈ります。公演委員長の思い出を売る男役・田邊真也も、「最後まで演じきりましょう!」と日下の言葉に応えます。
劇場は満員御礼。戦後の物悲しい裏町を舞台に、すすけた壁の前でサクソフォンを片手に思い出を売る男。哀愁漂うその音色とともに、傷つき疲れた裏町の住人たちの心が、幸福な思い出によって輝きを取り戻していきます。
過酷な環境にあっても、抗いがたい運命にさらされても、人間の魂は幻想の中に宝石のようなまばゆい光を見つけ出すことができます。
劇場を覆う満天の星空の下、万雷の拍手に包まれて幕を閉じた『思い出を売る男』。これまで劇場に足を運んでくださったすべての皆様に、改めて深い感謝を申し上げます。
そして、自由劇場では2月9日(日)にミュージカル『壁抜け男』が開幕します!
パリっ子たちを熱狂させたフランス生まれの切なくも愛おしい恋物語。ある日突然、壁をすり抜けられる力を持ってしまった孤独な青年の運命とは? どうぞお楽しみに!