子どもたちに演劇の感動を届けよう――。「こころの劇場」公演(※1)のため、全国へと旅立ったファミリーミュージカル『ガンバの大冒険』。出発から1ヵ月を過ぎた10月末、思いもよらぬ感動をもらう出来事がありました。
10月29日(日)、カンパニーは新潟県・新潟港から船に乗り、佐渡海峡を渡って佐渡島へ(※2)。そこからバスに乗り換え、海岸沿いを走ることおよそ1時間、島の南東にある集落・柿野浦(かきのうら)へやって来ました。
一行が目指すのは、佐渡を拠点に活動する太鼓芸能集団「鼓童」の研修所。2日後に控えた『ガンバの大冒険』佐渡公演では、舞台設営や撤収などの運営を19名の鼓童研修生にお手伝いしてもらうことになっており、この日はそれに先駆けて交流会が催されることになっていました。
「鼓童」とは、太鼓を中心とした音楽芸能を現代的な舞台芸術へと昇華させ、日本の伝統芸能の新たな魅力を創造し、発信するプロの芸能集団です。活動の歴史も深く、今年で創立35周年の節目を迎えられました。現在は歌舞伎役者・坂東玉三郎さんが芸術監督を務められ、その活躍の場は、日本全国はもとより、世界47ヶ国にもおよびます。
今回カンパニーと交流することになったのは、鼓童のメンバーを目指し、太鼓はもちろんのこと、舞台人、社会人として様々な経験を学んでいる若い研修生です。
俳優スタッフを乗せた車が細い山道に入った頃、ふと、太鼓と笛の音が――。研修生らが演奏しながら出迎えてくれたのです。華やかで想いのこもった歓迎に、早くも胸を打たれた一同。しかし、この後の交流会で、大きな感動と、舞台人として共通するもっとも"大切なこと"を強く再認識することになります。
交流会の冒頭には、研修生たちが挨拶をかねてフレッシュで力強いパフォーマンスを披露。続いて鼓童メンバーの齊藤栄一さんによるワークショップが行われ、俳優・スタッフも太鼓を体験。「リズムや音色よりももっとも大切なこと。それは、まずはみんなが気持ちを一つに集めることです」との熱い指導に、目を合わせ、息を合わせて太鼓を打ち鳴らします。
心温まる交流会と歓迎ぶりに、公演委員長の池田英治は、
「皆さんのパフォーマンスを拝見した時、涙が出そうになるほど熱いものを感じました。今日皆さんにもらった感動をエネルギーに変えて、佐渡の子どもたちにお返ししたいと思います」と、約束をしました。
太鼓とミュージカル。舞台で感動を届けるという同じ目的をもって活動をする2つの団体の交流は、互いに強い刺激とエネルギーを与えてくれたようです。
この翌日、今度は研修生たちが来場し、四季の舞台運営を体験しました。その様子は、後編レポートでご紹介します!
※1 「こころの劇場」とは、全国の小学生を劇場へ招待するプロジェクト。多くの企業・行政のご協力を得て運営し、2015年度は56万人を無料で劇場に招待しました。
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※2 新潟・佐渡間の俳優・スタッフの移動および舞台道具のトラック輸送は、「こころの劇場」新潟県協賛の佐渡汽船株式会社にご支援いただいています。