作曲・兼松 衆さん×音楽監督・清水恵介さん

作曲を手掛ける兼松衆さんと音楽監督の清水恵介さんが、
楽曲制作のエピソードや、その魅力を語ります。

※記事は「四季の会」会報誌「ラ・アルプ」2021年6月号(初演時)に掲載されたものです

清水さんは『ロボット・イン・ザ・ガーデン』に続いて今回が2回目、兼松さんは劇団四季とは初めてということですが、お二人ともファミリーミュージカルをご担当なさってみていかがですか。

清水
音楽に関しては、あまり大人とか子どもとかにこだわらずに、いい音楽を作ろうと。やっぱり兼松さんのワールドがあるので、そこはだいじにしていきたいなと思っているんです。
兼松
そうですね。子どもたちって、子ども扱いされると嫌がると思うんですよ。それで観劇自体に興味がなくなってしまう、という風にはしたくなくて。
清水
やっぱり今の世の中、情報量が多いから。子どもたちもいろんなことを知ってる。音楽の多様性も感じられるようになってきているから、年代を意識して音楽をつくる必要性は無いなと思うんですよね。
清水恵介さん
清水恵介さん

兼松さん、劇団四季と初めてタッグを組まれたご感想は?

兼松衆さん
兼松衆さん
兼松
作品の製作自体は去年の夏ごろから始まったんですけど、最初、「作曲家目線で、脚本をどう思いますか?」って意見を求められたのにはびっくりしました。そんなこと初めてだったので面白かったですけど。実際に作曲を始めたのはもう少し後なのですが、脚本家、演出家はじめ全スタッフがいて、という最初の段階から参加させてもらうことって他ではあまりないんですね。なんか一緒に仕事してるなっていう感じで良かったと思います。
清水
だいじですよね。スタッフが濃密にたくさんの時間を共有することは。

清水さん、兼松さんが作られる楽曲の印象は?

清水
僕にとってはすごく新鮮でしたね。兼松さんはいわゆるミュージカルテイストというものにとらわれずに書いてくれたところが、一番良かったかなと。とてもフレッシュな視点でとらえてくれて、それがすごくうまくいったと思います。ミュージカル畑じゃない世界から来た人が、新鮮な風を吹き込んでくれたなと。ほめ過ぎ?(笑)
兼松
(笑)でも、この作品だからっていうのはありますよね。原作の、国籍感とか時代感が――どこだかわからないけど、どこにでもあるかもしれないような感じ。それが、あまり色をつけずに自由にやらせてもらえたってことかと。
清水
うん、それもあるね。

演出の山下純輝からは、曲作りにあたってのリクエストやイメージの共有のようなことはありましたか?

清水
山ほどありました(笑)。山下さんは音楽に関して具体的なイメージを持ってらしたから、それはダイレクトに作曲家に伝えられて、やりとりがいっぱいあって、すごく良かったと思いますよ。
兼松
そう、わかりやすかった。山下さんのイメージを、言葉だけでなくデモミュージックでも伝えてもらったので。全部を指定されたわけではなく、ヒントをたくさんもらったという感じで。

ファミリーミュージカルではテーマソングがとても重要な役割を担うように思います。
「生きるって」というタイトルのテーマソングについてお聞かせください。

清水
もう、イントロから沁みます。今回はまずテーマソングから制作に入ったんですよ。兼松さんも僕もそうですけど、他のスタッフもテーマソングに懸ける想いがすごく強くて。兼松さん大変でしたよ、10回以上も書き直しましたから。
兼松
けっこう行ったり来たりしましたね。ハードルが高くて。なかなか一発で、というわけにはいかなかったですけど、紆余曲折(うよきょくせつ)あって、今ある形になりました。
清水
本当にみんなで一緒につくったテーマソングっていう感じがしますね。テーマの「生きるって」という言葉もだいじにしながら兼松さんが作った曲は、イントロが流れたとたんにイメージを彷彿(ほうふつ)とさせるようで、すごくいい。

初演創作時の歌詞検討ワークショップにも参加されたとか。

清水
そうですね。作曲家が新しく作ってきた曲を、俳優が一からのアプローチで歌う。それを作曲家が聴いて、歌詞がどれだけメロディーにフィットしているのかなど、中間のプロセスを見る。そういうことの確認をする場ですね。
兼松
初めて四季の俳優さんが歌ってくださっているのを聴いて、ああ、こうやって劇団四季の作品になっていくんだな、と。他ではあまりない経験でした。

これから稽古が本格的に始まりますね。

清水
厳しくいきます!(笑) やっぱりハードルは上げないといい作品にはならないので。なるべく多くの課題を出して、いい作品にしていこうと思っています。
兼松
僕はどんなステージングが付けられて、かたちになっていくのか、ワクワクしています。テーマソングをはじめ、観る方の心に響いたらいいなと思って作曲したので、お客様の反応も今から楽しみです。
2021年初演の稽古場にて。打楽器の音色を確認する清水さん、兼松さん

かねまつしゅう

作・編曲家、ピアニスト。国立音楽大学作曲科を卒業。在学中よりジャズ・ピアニストとして活動を開始。近年では、読売テレビ・日本テレビ系 木曜ドラマ「私の知らない私」、Amazon Original ドラマ「僕の愛しい妖怪ガールフレンド」、NHK BS時代劇「まんぞく まんぞく」「剣樹抄~光圀公と俺~」、日本テレビ系 日曜ドラマ「金田一少年の事件簿」、映画「ディア・ファミリー」、NHKスペシャル「食の起源」など映像作品のほか、ミュージカル「新テニスの王子様」シリーズ、薬師丸ひろ子、手嶌葵の各氏への楽曲提供など、ジャンルを問わず幅広いフィールドで音楽活動を展開している。劇団四季では、ファミリーミュージカル『はじまりの樹の神話~こそあどの森の物語~』、ニッセイ名作シリーズミュージカル『ジャック・オー・ランド 〜ユーリと魔物の笛〜』の作・編曲を手掛けている。

しみずけいすけ

音楽監督。1982年劇団四季入団。退団後の2003年に有限会社清水音楽事務所を設立。代表取締役。音楽監督、指揮、歌唱指導、音楽制作等で活動中。最近の舞台作品として、『CHICAGO』『ユタと不思議な仲間たち』『夢から醒めた夢』『THE BOY FROM OZ』『ハネムーン・イン・ベガス』『三銃士』等。また、劇団四季では『ロボット・イン・ザ・ガーデン』『はじまりの樹の神話~こそあどの森の物語~』『アンドリュー・ロイド=ウェバー コンサート~アンマスクド~』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』にて音楽監督を務めている。東京都出身。

撮影=阿部章仁