原作者 デボラ・インストールさんインタビュー

ミュージカル『ロボット・イン・ザ・ガーデン』の原作者、デボラ・インストールさんが今年8月に来日。
2020年の初演は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で来日が叶わず、今回ついにご来場いただくことができました。
待望の初観劇の感想を伺います。

取材・文 = 三浦真紀

※記事は「四季の会」会報誌「ラ・アルプ」2022年9月号に掲載されたものです

――まず、『ロボット・イン・ザ・ガーデン』が日本でミュージカルになると聞いて、どう思われましたか?

泣いたと思います。普段は私、あまり泣かないのに。それくらい、ものすごく感動的な出来事でした。劇団四季のウェブサイトを拝見して、Google翻訳を使いながら読めるだけ読み、これは絶対に素晴らしい作品になると確信しました。何がハッピーって、日本に行ってミュージカルが観られること!(笑)
日本にはそれまでに3回訪れたことがあって、私にとって最高にクールな場所なんです。タングが日本でどのように愛していただけるのか、心からワクワクしました。

――今回が4度目の来日ですね。名古屋で『ロボット・イン・ザ・ガーデン』をご覧になった感想は?

劇場に足を踏み入れた瞬間、こんなに大勢の方々が観てくださるのだと圧倒されました。作品自体は、映像で先に拝見していたので、ここはイメージ通り、ここは少し違う、などの発見が面白かったです。特に雨の場面がどう見えるのか気になっていて、私、家で同じような傘を買ってしまったくらい(笑)。実際に観たらとても美しい場面で感動しました。

――タングに会われて、いかがでしたか?

とても不思議で素晴らしい体験でした。まるで舞台上にいる自分の子を見守るよう。造形は想像通りでしたが、私はタングの背中側をあまり見たことがなくて。パペティア(パペットの操り手)の方々がどう動かしているのか、気になって見ていました。特にタングの手が何かをつかむ感じは私が本で書いた通り。パペットデザイン・ディレクションのトビー・オリエさんがそのまま表現してくださったのだなぁと本当に嬉しかったです。

――タングの目の動きや表情については、どう感じましたか。

とても賢くスマートなやり方だと思いました。私が本を書く際、タングの表情をどう表すかについてはかなり考えたところでもあったんです。英語版の編集者から、「タングは肺がないのにどうやってため息をつくの?」と聞かれて、体を少し持ち上げて、「ふーっ」となるのかな?とか、体の動きを想像しながら書いたんです。舞台上のタングは瞬きなどまさに思い描いていた通り。両目の周りの四角い部分がすごく利いているなと思いました。二人のパペティアが操作することで、重さやぎこちない動きにも対応できて、タングの多面性がよく表せていましたね。

――タングはベンとの交流を重ねて、少しずつ人間に近くなっていきます。二人の交流については、どう思われましたか。

パペティアのお二人はもちろん、ベンを演じる役者さんが素晴らしかったです。二人の出会いからラストまでを、実に丁寧に描いていらっしゃいます。例えばタングが「フンッ」と憤り、それにベンが反応する様子や、二人が口論をするシーンは見応えがありました。そして雨のシーンで水たまりをパシャッとかけ合う、カトウを含めた彼らの交流は、この先のキャラクターの描き方を考える上で、「そうそう、シリーズの最初の方はこうだった!」と私に原点的なものを思い出させてくれました。面白い発見もありました。タングはガムテープで胸のフラップを止めていますよね。それは私が大好きな彼のかわいらしい部分の一つなんです。でも舞台を観たら、あのガムテープがいかにベンの象徴であったかに気付かされました。ベンは元々、何かを直そうとする時、とりあえずガムテープを貼っておけばいいか!というその場しのぎの人だったんです。そんな彼は物語が進むにつれ、物事にきちんと対処できる人間に変わっていく。ガムテープはタングだけでなく、ベンをも表していたんですね。

――デボラさんは息子さんの子育てをヒントに『ロボット〜』を執筆されたそうですね。タングを描く上で意識していることは何でしょう?

身の周りへの好奇心です。幼い子どもたちがなぜこれほどまでに愛すべき存在であるのか。それは世界中に対して好奇心を持っているからだと思います。それこそがタングのパーソナリティーであり可愛さの秘訣なんです。マイクロンシステムズの床をタングがツーッと滑っていくシーンがありますよね。2、3日前に主人が息子のトビーを連れて浜辺に行ったんです。海に向かってバンザイして走っていく息子の写真が送られてきて、まさにタングがやりそうなことだなと思いました。息子はもう9歳ですが、年を重ねるごとにタングに似ていくような気がします(笑)。

――この舞台からデボラさんがお感じになったメッセージはありますか?

心温まる感じ、気持ちがフッと持ち上げられるような感覚を受け取りました。これは常日頃から、私が読者の皆さんにも感じてほしいと思っていることです。特に今の混沌とした世界情勢において、ほんの2~3時間、壊れかけたものが希望や前向きな気持ちへ、不和が愛情へと変わっていく様を観られるのは、素敵なことではないでしょうか。この作品は宝物です。見どころが豊富で、私自身、何度も繰り返して観たいくらい。心を存分に揺らし、動かすために、ぜひご覧いただきたいです。

撮影=上原タカシ