『エクウス』――ドラマを際立たせる舞台装置と照明の魅力

東京・自由劇場で上演中の『エクウス』。ショッキングな事件を起こした少年アランの心理とその真相に迫るこのドラマでは、俳優たちの研ぎ澄まされた演技の他にも、舞台装置や照明技術が大きな役割を果たしています。シンプルでありながら強烈な印象を残す舞台装置や、計算され尽くした照明デザイン。その魅力の一部をご紹介します。

「木造の円型装置の上に、木造の平方形(スクエア)がセットされる。スクエアは、手すりをつけたボクシング・リングを思わせる。手すりもやはり木造で、スクエアの三方をとりかこむ――」
作家ピーター・シェーファーが台本に記したこれらの「指示書」に基づき、『エクウス』の舞台装置はつくられています。

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中でも特徴的なのが、舞台上に設置されたステージシート。まるで舞台装置の一部のように空間に溶け込むこの席で、観客はアランとダイサートのやり取りを、文字通り目撃します。それは俳優、ステージシートの観客、その両者を見つめる客席の観客、三者の間に濃密な緊張感を生み、演劇的効果を果たすのです。
このセットは、初演当時よりメンテナンスを行いながら使用し続けており、「歴代の『エクウス』に出演してきた先輩方の汗と涙がセットから伝わってきて身震いがする」と今回の出演者も語るように、初演から40余年の想いを脈々と受け継いでいます。

照明についてもまた、台本上に多くの具体的な指示が記されています。
例えば、アランが馬と初めて厩舎で出会うシーン。「スクエアいっぱいに照明が降り注ぐ。馬の動きにつれて、俳優の頭上で仮面の金属が照明を受けてきらきら光る」という指示に基づき、このシーンでは横や後方から明かりを当て、非常に明るい空間をつくり出しています。他にも、野原や映画館、夜の厩舎など、大きな舞台転換が無い中でも、照明によって多様なシーンを豊かに表現します。さらに、「馬」のマスクを暗闇の中から浮かび上がるように見せたり、ステージシートを含む全ての観客から俳優の表情が見える状況を作り出したり、明かりの強弱や角度の調整を、非常に細かいレベルで行っているのです。
ご観劇の際には、これらの舞台装置や照明の効果にもぜひご注目ください。


人間の本質を問い、鮮烈な印象を残す台詞劇『エクウス』の上演は、いよいよ今週末7月10日(日)まで。どうぞお見逃しなく!

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    真上からの照明によって闇の中に浮かび上がるような「馬」のマスク

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    細かく位置の調整を行うことで、照明機材による繊細な表現を可能にします。

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