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コラム

二人のクリエイターが語る『ロボット・イン・ザ・ガーデン』――台本・長田育恵さん、演出・小山ゆうなさんに聞く

現在、京都劇場にて上演中のオリジナルミュージカル『ロボット・イン・ザ・ガーデン』。
関西初上演を果たした本作は、連日お客様から温かい拍手をいただいています。
観る人の心を優しく包み込むこの作品の魅力を、本作の台本・作詞を手掛ける長田育恵さんと、演出を担当する小山ゆうなさんの言葉からひも解きます。

(2021年12月、東京・自由劇場にて行われた取材会より)

左から、小山ゆうなさん、長田育恵さん

雑誌「ミュージカル」(ミュージカル出版社)が発表した、「2020年 ミュージカル・ベストテン」にて、作品部門第1位をいただいた本作。

長田:「この作品の登場人物は、共感を呼ぶ力がとても強いんです。ごく普通の人たちのささやかな日常のなかに、普遍的なメッセージが込められています。等身大の人の感情を描き出しているところが、今の時代にフィットしているのではないでしょうか」

小山:「長田さんが書かれた、日常なのにポエティックな演劇的言語、美しい日本語を、言葉を大切にする劇団四季の俳優が話す。そのバランスが良かったんだと思います。また、お客様がいっしょに作品を育ててくださって、どんどん作品が豊かになっていると感じています」

舞台は、アンドロイドが活躍する近未来のイギリス。両親を亡くしてから無気力な毎日を過ごす主人公・ベンは、キャリアに生きる妻・エイミーとすれ違う日々。ある日、庭に壊れかけのロボット・タングが現れて――。
タングを修理するための旅路で、二人は世界中の様々な人と出会い、人生の営みに触れ、少しずつ歩みを進めます。

近い未来の物語でありながらも、今を生きる私たちが共感せずにはいられない、心に響く印象的な台詞の数々が散りばめられています。

小山:「長田さんの書く言葉はキラキラしていて、私自身、日々新しい発見があります。お客様も、きっと観るたびにキャッチするものが違うと思うので、自由に感じ取っていただけたら」

原作は、世界各国で愛されるイギリス発の同名小説「ロボット・イン・ザ・ガーデン」。この物語を、ミュージカルの台本として書き上げた長田さん。

長田:「この小説は少し未来のイギリスが舞台。ウィットに富む軽妙さがあるんですが、日本に住む私たちが観て共感できるように、工夫しました。夫婦のやりとりをきめ細やかにしていったり、タングとの出会い方をより丁寧に解きほぐしたり。登場人物の感情を丁寧に描き起こすことで、物語の筋が自然と紡がれていくように、人物主体で物語を捉え直しました」

そして何よりも、本作で欠かすことができない存在、ロボットのタング。
ベンとの旅を通して、タングはどんどん豊かな感情を見せるようになります。

長田:「タングはいわゆる"キャラクター"でありながら、"ブラックボックス"でもある。ベンの考えや感情を感じ取りながら、学習していくんです。何もない"ブラックボックス"だったタングが、人の美しい営みを通して成長していく過程、そして最後にどう行動するのかを、ストーリーの都合で動かさないように気を付けました」

「身の回りのもので作られた、あり合わせのロボット」という設定のタング。
目が閉じたり開いたり、首が伸びたり――その愛くるしい姿が魅力です。
二人のパペティア(パペットの操縦者)が、息を合わせて操ります。

小山:「タングでデザイン・ディレクションを担当してくださったトビー・オリエさんとは、何度も打ち合わせを重ねました。タングに関しては、様々なアイデアがあったのですが、目の角度やまばたきによって表現される感情などは、彼の計算とチョイスによるものです。操る俳優からはタングの顔は見えないし、自分の顔を動かすわけではないので、とても難しい技術です。稽古を積み重ね、手の感覚を使って細やかに表現してくれています。パペティアたちはお互いに切磋琢磨し、息の合ったタングを創り上げてくれました」

京都公演は、4月16日(土)まで。5月からは、全国ツアーへと旅立ちます。
ベンとタングの心温まる旅を、ぜひお近くの劇場でお楽しみください。

(撮影:阿部章仁)

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