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コラム

『ノートルダムの鐘』京都公演に向けて――海外クリエイティブスタッフによるブラッシュアップ稽古より(後編)

海外クリエイティブスタッフが来日し、京都公演開幕に向けブラッシュアップ稽古が進むミュージカル『ノートルダムの鐘』。

前日の「通し稽古」を経て、これからやるべきことを確認した演出スコット・シュワルツさん、振付チェイス・ブロックさん、アソシエート・音楽スーパーバイザーのブレント=アラン・ハフマンさん。
演出、ダンス、音楽のパートに分かれ、具体的なブラッシュアップ作業が行われた後、前回とは異なるメンバーで「通し稽古」が行われました。
時折うなずきながら、真剣な眼差しで見つめるスコットさん。
稽古が終わると、「昨日の通し稽古の後に私たちの稽古でやったことを、うまく織り交ぜてくれましたね。素晴らしいモーメントもありました」とコメント。

シンプルで抽象的な舞台装置によって「人物」が引き立てられ、ドラマが展開される本作。その人物もまた、時に象徴的なジェスチャーや動作によって、言葉以上のメッセージを伝えます。
例えばオープニング――人と異なる容姿に生まれた主人公のカジモドが現れる場面。
一人の青年が、カジモドとして生き、これから彼の宿命を背負うという物語のはじまりを、周囲の会衆たちを含めた身体表現で語るのです。

スコットさんは「なぜその行動を起こすのか」「なぜこのジェスチャーをするのか」とたびたび俳優たちに問いかけます。一つひとつの動きを決まった演出としてやるのではなく、登場人物の思考回路を追うこと。その行動に移すまでには大きな決断が必要かもしれない、痛みを伴う苦しくて辛いことかもしれない。しかしそれを行うのはそれだけの意味があるからだと、俳優たちに熱のこもった言葉で語りかけます。

「痛み」「怒り」「恥」――。
稽古のなかで、スコットさんから何度か印象的に語られる数々のワード。
15世紀末のパリを舞台にしながらも、今を生きる私たちに深く突き刺さる物語である理由が、その言葉の端々から改めて感じられます。
限られた時間のなかで、できるだけ多くを得ようとする俳優たちの表情には、充実感が満ちていました。

初めて観る方もそうでない方にも、観るたびに鮮烈な印象を与え続ける『ノートルダムの鐘』。
今この瞬間だからこそ体感できる舞台を、京都劇場でぜひご覧ください。

(撮影:阿部章仁、劇団四季)

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